埼玉医科大学国際医療センター集中治療科は、平成26 年 8 月、埼玉医科大学3病院の中では初めて診療科として発足しました。特定集中治療室であるA棟4階ICUで診療活動を行っています。当センターには集中治療室(ICU)、ハイケアユニット(HCU)などの重症系病棟が複数存在しますが、このA棟4階ICUではおもに成人の心臓血管外科術後患者さんが治療を受けています。手術直後の数時間~数日間は心臓の機能、肺の機能、腎臓の機能などが低下して不安定な状態になります。そのため術後安定するまでは、心臓血管外科医師と集中治療科医師が協力して診療に当たっています。
集中治療においては手術直後の不安定な病態を乗りきること、また重症な心不全・呼吸不全、重症感染症(敗血症など)などの患者さんの治療を行うために、内科や外科というひとつの専門的知識だけでなく、関連する多くの、全身にかかわる知識・技術が必要になります。また集中治療室での看護も一般病棟とは異なった、より専門性の高い技量が求められます。このように集中治療室では多方面の知識や技術を必要とするため、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、臨床工学技士、薬剤師、管理栄養士等、多職種を交えたカンファレンス、情報共有を行いつつ、最適な治療を実践しています。
当科はおもに心臓血管外科術後患者さんの診療業務が中心でしたが、令和3年4月より重症新型コロナウイルス感染症に対応すべく、感染症科や救命救急と連携し、救命ICU、A棟1階ハイケアを主な活動拠点としています。また、他の集中治療室、一般病棟からのコンサルテーション、重症管理などにおいても随時対応しています。また、RST(呼吸サポートチーム)、NST(栄養サポートチーム)のコアメンバーとして院内の人工呼吸管理、栄養管理に携わっています。令和4年には救命ICUが日本集中治療学会専門医研修施設となることが決まっており、今後は専門教育、専門医の育成に力を入れていきます。
1)心臓血管外科術後
虚血性心疾患、弁膜症、大動脈疾患、重症心不全(心臓移植、補助人工心臓植込み)など
2)重症呼吸不全
ARDS、重症肺炎、心原性肺水腫など
3)急性腎傷害
急性期の持続的腎代替療法(CRRT)など
4)敗血症
感染、ショック管理など
5)血液凝固異常
播種性血管内凝固症候群(DIC)など
6)その他、集中管理が必要な症例
施設認定
日本集中治療医学会 専門医研修施設
日本呼吸療法医学会 専門医研修施設
診療実績
1.心臓血管外科術後患者の管理 年間約600 名
2.RST対象患者 年間約700名(延べ人数)
3.病棟、各診療科からのコンサルテーション 年間約100名
4.院内VAP(人工呼吸関連肺炎)サーベイランス
2016年 VAP感染率 0.71(1000人工呼吸器日数)
当科は、心臓血管外科をはじめ専門診療科と連携し、ICUに入室した患者さんの重症管理を行っておりますので、ご紹介は各専門の診療科に行っていただくだけで結構です。ICUの入退室は当院の集中治療室入退室基準に従います。
メディカルソーシャルワーカー、退院支援ナースと連携し、集中治療後の長期入院が必要な患者さんの転院先の選定を行っています。今後は、問題となっている院内急変前対応や集中治療後症候群(PICS)などについて、セミナー等を通じて、連携施設の先生方に貢献したいと考えています。
診療部長、教授